
- 定義
- アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。
- 診断基準(3つのうち1つ以上を満たすとアナフィラキシー)
- ①急速な発症(数分〜数時間以内)で、以下の皮膚または粘膜症状+呼吸器症状 or 循環器症状を伴う
- 皮膚:じんましん、紅斑、顔や唇・舌の腫れ
- 呼吸:喘鳴、呼吸困難、声がれ
- 循環:意識低下、血圧低下、失神など
- ②アレルゲンに暴露後に、2つ以上の臓器に症状が出現
- ③既知のアレルゲンに暴露後に、血圧が低下または意識障害などの循環器症状のみ出現
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- ※皮膚症状がみられない場合もあり、呼吸器・循環器症状の確認が重要です。
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- 好発時期
- 医薬品の投与開始直後から 10 分以内に生じることが多く、概ね 30 分以内に症状があらわれる
- 投薬上のリスク要因
- あらゆる医薬品で発症する可能性がある。造影剤、血液製剤、抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗悪性腫瘍薬などで多い
- 早期に認識しうる症状
- ・消化器症状: 腹痛・嘔吐・吐き気・下痢など
- ・眼症状: 視覚異常・視野狭窄など
- ・呼吸器症状: くしゃみ・咳・喘鳴・嗄声・呼吸困難・鼻閉 胸部の絞やく感・犬吠様咳嗽・チアノーゼなど
- ・循環器症状: 胸痛・動悸・頻脈・不整脈・血圧低下など
- ・神経症状: 不安・恐怖感・意識の混濁など
- 薬剤ごとの特徴
- 抗菌薬
- ・ βラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系)が最多であり、ニューキノロン系抗菌薬の症例も報告されている。
- ・ 投与前の問診が重要であり、抗菌薬によるアナフィラキシーの発生を確実 に予知できる方法はない 。
- 解熱鎮痛薬(NSAIDs 等)
- ・ アスピリン等の NSAIDs のうち、1 剤だけで起きる場合と、複数薬剤のいずれでも起きる場合がある。
- ・ IgE は通常関与しないが、1 剤だけで起きる事例では関与しうる。
- 抗悪性腫瘍薬
- ・ 白金製剤が最多であるが、タキサン系抗腫瘍薬を原因とする報告も多い
局所麻酔薬
- ・ 自覚症状を訴える患者は多いが、アレルギー機序は稀で、心理要因または添加されている保存剤や血管収縮薬が原因であることが多い。
- 造影剤
- ・ 数千件に 1 件の頻度でアナフィラキシーが起きるといわれる。近年用いられている非イオン性、低浸透圧造影剤の重症の副作用の割合は 0.04%とされる。
- ・ IgE は通常関与しないが、一部の例では関与しうる。
- ・ X 線造影剤でも MRI 造影剤でも、アナフィラキシー重症化因子として気管支喘息が挙げられており、特に必要な場合にのみ慎重に投与するのが原則である。
- 輸血等
- ・ 重症アレルギー症状は血小板製剤 4,100 例に 1 例、赤血球製剤 32,000 例に 1 例、血漿製剤 7,600 例に 1 例と比較的多く報告されている。
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・ 赤血球製剤では他製剤と比べて発熱と呼吸困難が、血漿製剤、血小板製剤ではアレルギー、重症アレルギーの報告割合が特に多い。
- 生物学的製剤(バイオ医薬品)
- ・ 投与直後または投与の数時間後、薬剤によっては 24 時間以降にアナフィラキシーの発生が報告されている。多くは機序不明で、初回投与でも複数回投与後でも起こりうる。
- 漢方薬
- ・ 小柴胡湯、柴朴湯など複数で報告がある。漢方薬はそもそも複数の生薬の “合剤”であり、原因成分を含有する他の製剤でも生じる可能性が考えられるので注意が必要である。
- アレルゲン免疫療法
- ・ 皮下注射法の場合には、特に増量過程でアナフィラキシーが生じる可能性があり、100 万注射機会に 1 回重篤な全身反応が生じ、2,300 万注射機会に 1 回の頻度で死亡例がある。
- ・ 維持療法においても投与量の誤り、または注射間隔の極端な延長などによって、アナフィラキシーが生じる可能性があり注意が必要である。
- ・ アレルゲン免疫療法による全身症状の頻度は、皮下注射法で 1127 例中 23例、舌下免疫療法で 451 例中 9 例であり、アドレナリン投与を要したのは2 例のみであった。
- ・ わが国の舌下免疫療法による重篤な全身症状の頻度は、ダニ舌下錠で 0%-0.5%と報告されており、一方でスギ花粉舌下錠についても安全性が高いとされているが、少数例で重篤な全身症状が報告されている。
- 手術関連
- ・ 周術期に生じるアナフィラキシーの誘因としては、麻酔に使用する薬剤(特に筋弛緩薬)、抗菌薬製剤、ラテックスが重要である。
- 皮膚試験
- ・ まれではあるが、アレルゲン検索のための皮内テストでアナフィラキシー を生じることが指摘されている。検査時においても、患者を 20 分は待機させておくことが望ましい。
- ・ プリックテストでは、非常にまれとされるが、理論的にはその可能性が皆無でないため、同様の対処が望まれる。